Webディレクションとは何か2015
この記事は「Webディレクション Advent Calendar 2015 - Adventar」1日目の記事です。
日本酒 Advent Calendar 2015 - Adventarに並んで、私が立てました。理由は、単なる思いつきです。これあってもいいかなーと。
立てた者はトップバッターであった方がいいかなと12月1日に登録しました。しょっぱなとしては「Webディレクションってなあに」的な話が適切だと思い、書いてみます。
この話をするのはどんな人なのか
Webディレクション的な仕事について14年あまりになります。
最初は自分自身「Webディレクター」という職種を知らずに(昔だからね)、就職先の自社サイトとメルマガの進行管理をし、やがて自社サービスである良医紹介コンテンツのディレクションをやりました。
その後、派遣社員、フリーランス、正社員とさまざまな雇用形態で短期・長期、小規模・大規模のプロジェクトに従事、立ち上げ・火消し・運用まで、もっぱらディレクション・プロジェクトマネジメントをしてきました。
そうしたら「失敗しないWeb制作」という本を書く機会をいただき、また講師のお話をいただいたり「Web Designing」での執筆もさせていただきました。
制作のスキルはほとんどありません。何度かトライしてもあまりに適性がなさすぎました…。キャリアのスタートがディレクションで、その次もその次も、だったので制作スキルよりもディレクションのスキルを磨く方に意識が向いていたのもあります。
さて本題に移ります。
論じる人の数だけ「とは」がある
14年あまりWebディレクションを仕事にしてきて、いろいろな人の講演、記事、話を見聞きして思ったことです。論じる人の数だけ「Webディレクションとは」「Webディレクターとは」がある。
組織と組織、職種と職種のつなぎ目でもある
発注者と制作者、クライアントと制作会社、依頼者とデザイナー…と、組織ないし職種、が2つ以上存在する時に、双方要件を握り合ったり、意思疎通をはかったり、合意を取り付けたり、やがて「依頼」が「Webサイト(とかサービスとかアプリとか)」というブツに具現化していくのを監督する役目を、誰かが担うことになります。
これがWeb関連のプロジェクトであるときに、Webディレクションというタスク名となり、それを行うものがWebディレクターと呼ばれることもあります。
さて、Webディレクション全般に言える、Webディレクションとは何か?を列挙してみます。
こういった話は、職域としての定義とか、社会的役割としての定義といった切り口で論じられることが多いと思います。ここでは、もっと抽象度をあげて「どんな役割か」を純粋に述べたいと思います。
Webディレクションとは何か
情報の整理
イシュー、与件、要求、要件はそれぞれ異なります。
個々のプロジェクトにおいて、イシュー、与件、要求、要件は何であるかを明確にし、ときには設定していきます。
情報の収集、分類、分析、選択などを行います。
イシュー、与件、要求、要件のズレがあればそれを軌道修正するのも情報の整理です。やむを得ずズレたまま進めないといけない場合(上の人の命令とか無茶ぶりというやつ)であっても、ディレクションをする人の中でごっちゃにしないでおく意思があるとクールに仕事をさばけると思います。
また、情報量が多すぎたり、混乱しているものを整えるのも情報の整理です。
整理した情報を人から人へ伝える
何も聞かされていなければ物事が動かなかったり、さいあくモノができずに損害賠償請求や責任問題に及びます。
整理した情報を人から人へと伝えます。その際、受け手が理解できるよう「翻訳」を行うことも多々あります。
翻訳とはまた別に、受け手に適切な粒度の情報を伝えたり、伝える順序や伝え方を工夫することもあります。「食べやすいように切り分ける」イメージです。
プロジェクトの「光」を見据えて、そこへ導いたり思い出させる
個々のプロジェクトの光というか、北極星のような目指すところ、および、そこに到達した時のキラキラした未来を見据えて、何かと脇道にそれたり、迷走しがちな当事者たちに光を思い出させたり、光はこっちだよと導いていきます。
ちょっとポエミーですね。
実際には要件定義をしている場合は、要件定義の内容を見せたり、プロジェクトの目的やゴールを引っ張りだして「これを目指していましたよね」と言い( ゚д゚)ハッ!と目覚めさせることなどを指します(これには工数が見積もりを超過するのを回避する目的もあります)。
進行と監視
立てた計画に沿って進めていき、それがうまく進んでいるかを確認します。進行管理だとか、遅い人へのつつきといったものです。
あまり望ましくないですが、スケジュール表がない、守れてないという場合であっても計画的な何か(いつごろには出来ていて欲しいとか、いつどんな按配になっているかとか)はありますので、Webディレクションにおいてはそれに呼応してアクションをしていると思います。
まとめる、たたむ、次につなげる
プロジェクトの終わりには総括をします。
だいたいは制作が始まってから終わるまでの進捗がよかったか悪かったか、コミュニケーションの良し悪しの反省となりますが、プロジェクトの始まった頃からお金の面、時間の面、人の面…など多角的にまとめたいですね。KPTフレームワークなどで効果的平和的に総括するチームもあると思います。
ここで大事なのは犯人探しとか善悪を裁く方向にドライブしないことです。かといってみんながんばったね、パチパチとたたえ合う「だけ」でも改善点が有耶無耶になります。理想を言えば各々が自己効力感を実感しつつ、貢献度を認め合いつつ、課題点も認める。さらにその対応策も出しておくというところでしょうか。
プロジェクトを終えてチームを解散したり、他の会社さんに制作・運営業務を引き継ぐ場合はWebディレクターが終わりの儀を執り行います。手を離れたあとになって作業をやり直したり、お金を請求しきれてないということのないように、また引き継ぎ先に恨まれないように執り行います。
幸いにして引き続き提案したり、仕事を請ける可能性がある場合はこれまでの実績を踏まえて情報を整理しアクションを起こしていきます。
以下、おまけです。
Webディレクション・Webディレクター論私感
Webディレクターという職種名および彼ら彼女らを対象としたコンテンツについての私感です。
肩書きとやっていることが異なる場合もある
よくあるケースとして、デザイナーさんが「俺がディレクターになっちまってるよ~」と皮肉交じりに言う際は、そのプロジェクトにWebディレクターが存在したとしてもその人が機能しておらず、デザイナーさんが上記に述べたようなタスクを担うことになってしまっている状態であります。
また、プロジェクトの組織図や役割分担が書いてある資料などに「Webディレクター」という語句がなくとも、実際はそういうことをしている人がいて、本来の役割と兼任だったりします。(社長、営業、デザイナー…など)
そのような事実の是非はここでは話しませんが、彼ら彼女らにもWebディレクションの何たるかを知っていただけると、より仕事がうまくすすむと思います。
Webディレクションの話はWebディレクターにのみ向けられたものではない。
もう一回。論じる人の数だけ「とは」がある
先ほど「発注者と制作者、クライアントと制作会社、依頼者とデザイナー…と、組織ないし職種、が2つ以上存在する時に…」と書きました。
そこには事業会社、制作会社、広告代理店、大きい会社、小さな会社、個人商店、デザイン会社、自社で運営、受託がメイン、コンサルが強い、UXが強い、量産が得意…などさまざまなものが代入可能です。
それぞれのプロジェクトでWebディレクターたる人がWebディレクション行う時、その人の属性やミッションによって、「Webディレクションとはなんぞや」が変わります。
これが「論じる人の数だけ「とは」がある」と私が思う理由です。
通じる話と通じない話がある
そのようなわけでたとえば「Webディレクターは クライアントのビジネスの成功をデザインする」といった話に対して、自社運営でサービスを開発している人にとってはピンと来ない場合があります。
あくまで例示であって、ある意見が悪いとか、ピンと来ないことが悪いと言ってるわけではないので深読みはしないてくださいね。
もし、意見に対して、なんかすげーこと言ってるな!となったあとに、どこかピンと来ない場合に無理にその意見を理解しようとしなくてもいいのかなと思います。
「注意のつまみ」をいじる
話なり記事なりの受け取り手が自分の立場を把握した上で、どのくらい参考にするか「注意のつまみ」的なものを10なり3なりに調整してから話を聞いて咀嚼する、ないし、咀嚼するときにつまみをいじったほうが健全な気がします。
時折「吸収しなきゃ」と言っていながらどこか辛そうだった人を見たり、私も中堅以降最近まで、発言者の意見およびそれに反応する人の話をうけて、自分に見合わない程度に危機感やアンテナの感度を持とうとしてしまったことがあります。振り返るに、その精神の消耗がもったいないと思いました。
勉強するなとはいっていません。
自分の成長「の実感」、自分の満足「の実感」も大事です。
意見の強さというのは、発信者のインパクトや影響力もありますが、パイが大きいかというのもあります。例えば世の中に受託案件が多ければ、受託メインの方が発するWebディレクションの話がたくさん響きます(耳を立てる人の数、反応する人の数が多いし)。
さいわいなことに、最近はいろいろな立場のWebディレクションをする人の話が語られるようになりました。ですので取捨選択をし、強い言葉に対しても自分に必要そうかな?と自問するといいですね(自分が欲しい答えがないときは、自分から発信したり探していくのも大事)。
記事は以上です。
明日以降もWebディレクション Advent Calendar 2015 - Adventarで色々なテーマで語られると思います。どうぞ読んでいってください。私も楽しみです。
そして、まだ空きがありますので、これからの登録も歓迎です!